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第19話 狙われた奉仕力!
ビザール帝国。
暗く深い地の底にその本拠地はある。
復活を待つビザール帝王と、その足元に控えるビザールクイーン。
「クイーンよ…我の復活は未だかなわぬのか…」
轟くような重く禍々しい声が祭壇のような洞窟内に響き渡る。
「は…かねてからのご報告の通り…ご奉仕戦隊めらにことごとく阻まれております」
「うむ…」
「我々はウルフ、ドクターV、怪人どもを全て失っております」
「そやつらを倒さぬ限り…ビザールの繁栄は無いということか」
「さようで」
帝王はうなづくと、その足元から異様な物体を取り出した。
それは植物の種子のように見えた。どくどくと怪しく脈打っている。
「これは…?」
「我の思念の塊。我の負のエナジーが込められている。この種を得た物は…ビザールの意のままの怪人となる」
「おお…」
「それで再び怪人軍団を組織し、メイドファイブを倒すのだ!!」
「御意!」
クイーンの瞳は妖しく輝いた。
メイドファイブに受けた仕打ちを思い出し、思いを強くする。
「必ず…必ず奴らに地獄を見せてやる!!私もパワーアップしているんだからな!!」
* * *
「ふにゃあぁぁぁああああ」
心底やることがないといった趣の大アクビをついているのは、メイドピンクこと桃園愛。
「…ヒマだね」
そのアクビに相槌を打つようにテーブルにもたれるメイドレッド、赤大路千歳。
裏メイド戦隊を撃退してからというもの、実に平和な日々が続いている。
以前は1週間に1回のペースで襲ってきていたビザール帝国だが、最近はすっかり姿をみせなくなった。
「裏メイド戦隊…確かに手ごわい相手だったけど、あれで手駒が尽きたのかもしれないわ」
「そうですわね…となると、今は戦力を増強させてる…ってことですわね、きっと」
戦隊の頭脳派、ブルーこと青山涼子とグリーンの緑川萌枝がうなづきあう。
「…ちゅうことは、またあいつら攻めてくるわけやんなぁ、かなわんわ」
テーブルの上のおせんべいをバリボリとかじりながらつぶやくのは、メイドイエロー、イエロータイガーフィールド。
「どっちにしろこちらから攻めていけない以上、あいつらが出てくるのを潰していくしかないわけだよね…」
「そうね…じれったいけどね」
5人のメイドたちは一様にため息をつき、いつ終わるともしれない戦いに思いを巡らせる。
しかし、その思考は駆け込んできたメイド長、白鳥さやかの声に中断された。
「みんな!ビザールが現れたわ!すぐに出撃して!!」
さすがの反応で出撃準備を整えた彼女たち。
ご奉仕戦隊、出動!!
* * *
「科学アカデミー表彰式」
でかでかと書かれた看板が立派なホールに掲げられている。
中では、輝かしい功績を残した科学者たちが特別な賞を受けるために緊張した面持ちで並んでいる。
拍手のなか、勲章を首にもらい礼ををする白髪の男。
壇上のその様子を見ながら、「違う…」と呟く女性がいた。
次に壇上に呼ばれたのは、年端も行かぬ少女だった。
司会者が紹介する。
「セラヴィー・セラミック博士です。彼女はまだ14歳でありながら奉仕力のエネルギー効率についての論文が学会にて認められ…」
セラヴィー博士は照れる様子も緊張した様子もなく、さも当然の体で勲章を受け取り、貴賓席でふんぞり返る。
「ふん、つまらん。こんなわけのわからん勲章よりもウサギさんのぬいぐるみがいいのにのぅ」
年齢に似合わぬ言葉使いだが、内容は年齢より幼い奇妙な独り言。
銀髪に碧眼。その長く流れるような髪は頭の両側でまとめられ、垂れ下がっている。
なぜか片眼鏡をつけて、フォーマルなはずのこの場に白衣でいる。
その年齢ともあいまって、ひたすら場から浮いていた。
「奉仕力」の言葉に妖しい女の瞳が光っていた。
「その女だ!!」
突如客席から立ち上がり、壇上へと歩み寄る。当然ガードマンらしき男がそれをさえぎる。
「困ります、記者の方は席に…」
「離せ」
女が腕を一振りすると、ガードマンはなすすべもなく吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
異常事態に各所で控えていた警備員が集まり、彼女を包囲する。
会場は逃げ惑う人々でパニック状態だ。
「…ふん、しゃらくさい」
女は多数を相手と見るや、奇妙な形に体を変形させていく。
まとっていたスーツがビリビリと破れていき、背中から翼が生え、両足には鋭いかぎ爪が見えた。
「ビザールイーグル参る!!」
誇らしげに自らの体を誇示するビザールイーグル。
彼女がぶわっと羽を羽ばたかせると突風が巻き起こった。あまりの風に吹き飛んでいく警備員。
ふと見れば、会場内に立っているのはビザールイーグルとセラヴィー博士の2人だけになっていた。
「わ、わしをどうする気じゃ」
さすがに怯えの色を隠せずに博士が震える。
「なに、取って食おうってわけじゃないんだ、おじょうさん。その頭脳をわれわれに貸してもらえないかと思ってね…。」
余裕の笑みを見せながらイーグルは博士に近づいていく。
「イヤだと言ったら…」
「言わせない」
言うが早いか、イーグルは飛翔した。
とんでもないスピードで博士にせまり、彼女をあっというまに小脇に抱え込む。
「な、なにをするのじゃっ!」
「このまま基地までご案内させてもらうまで」
イーグルが下半身にタメを作り、いざ飛び立とうとしたその時、ホールの中に勇ましい声が響き渡った。
「そこまでよ!!」
「!何者だっ!!」
おもわず振り返るイーグルが見たものは、颯爽と居並ぶ五人の少女。
「メイドレッド!」
「メイドブルー!」
「メイドイエロー!」
「メイドピンク!」
「メイドグリーン!」
「ご奉仕戦隊メイドファイブ!!」
五人の声が凛々しく響く。そして、決めの一言。
「ご奉仕させていただきます!!」
「来たなメイドファイブ…!返り討ちにしてくれる!!」
ビザールイーグルは博士を放り出し、メイドファイブに向き直る。
「いでよ、ビザールコマンダー!!」
イーグルの叫びにわらわらと沸いてでる戦闘員たち。
「ほんまに、こりへん奴らやなぁ」
「グリーン、久々だろうから気をつけてね」
「大丈夫ですわ、お気遣いなく!!」
軽口など叩きながら、迫りくるコマンダーたちを一網打尽にしていくご奉仕戦隊。
レッドのモップが敵を薙ぎ、ブルーのトレイが切り裂き、イエローが持ち上げ、ピンクが走り回り、グリーンのはたきが舞う。
やがて、戦闘員たちは全て消滅していた。
「…うわさに違わぬつわものぶりだな!!」
ビザールイーグルはその翼を広げ、威嚇する。
「くるわよ!!」
ブルーの叫びに構えなおすご奉仕戦隊。
「キィエアアアアアー!!」
グライダーのように滑空し、5人にせまるイーグル。
その大きな翼は一度にブルーとピンクを射程に捕らえた。
かろうじて両側に飛びのき、地面を転がる2人。
「まだまだぁあああ!!」
怪鳥のごとく高音で叫びながら、空中で信じられない姿勢の制御で再び遅い来るイーグル。
体勢を崩したブルーを狙う。
「グリーン・サンダーっ!!」
だが、その動きはグリーンに読まれていた。グリーンの得意技、グリーンサンダーがイーグルをまともにとらえ、動きを鈍らせる。
「ここね!!」
ブルーはすかさず鋭い蹴りを放ち、イーグルを捕らえる。
正確に急所を捉えた攻撃に、思わず空中に飛び上がり距離を置こうとするイーグル。
「イエロー!!」
「いくで、ピンク!」
すかさずイエローの肩口にピンクが飛び上がり、イエローがピンクをイーグルめがけて投げつける。
「翼を狙って!!」
グリーンの指示が飛ぶ。
「たああああ!!」
ピンクとイーグルが空中で交差する。
イーグルはまともに翼に損傷をうけ、バランスを崩した。
落ちてくるピンクをすかさずイエローがキャッチ。
空中で動きを制御しきれず、ふらふらと着地するイーグル。しかし、その着地点に正確に走るブルー。
「奉仕力カッターっ!!」
ブルーの得意技、奉仕力カッターがイーグルめがけて飛ぶ。
かろうじてそれをかわすイーグル。
「かわしたぞ!!」
翻って、反撃のため力を蓄える。が、ブルーはニヤリと笑った。
「奉仕力…ホームラン!!」
かわされた奉仕力カッターをレッドがそのモップで打ち返す。
予想もしない角度からそれはイーグルを遅い、まともに背中の翼を切り裂いた。
どすんと倒れ伏せるイーグル。
「な…なんたるすさまじい連携…っ」
翼をもがれ、完全に戦闘力を失ったイーグルは、それでも最後の力を振り絞るように立ち上がる。
「もう少し…もう少し…」
とうわごとのように呟きながら。
「みんな!とどめよ!」
レッドが叫んだ瞬間、5人はそれぞれの武器を天高く投げ上げた。
それは、空中で融合し、変形し・・・
やがて、巨大な砲身となって地上に降りてきた。
5人はそれぞれその砲身の配置につく。
グリーンとピンクが発射口の横に、イエローとブルーが砲身の横に、レッドが引き金を引く位置に。
「奉仕力ビィィィィィィム!!」
五人の奉仕力がひとつにまとまり、砲身から5色のきらびやかな光線が発射された。
それはイーグルビザールに命中した。
「ビザール帝国…万歳!」
彼女は断末魔の悲鳴をあげながら爆発して消えていった。
「やった!!」
レッドは久々の快勝に声を上げる。
そのとき、どこからともなく声がした。
「メイドファイブ!!奉仕力の権威、セラヴィー博士はいただいた!!」
はっと声のした方向を見ると、セラヴィー博士が異形の怪人と大柄な女性に捕らえられている。
「あっ…!!」
「お前は…っ!!」
5人はそれぞれ息を飲む。
まさにそこに立っていたのはビザール帝国大幹部、ビザールクイーンだったのだ。
「ビザールカメレオン!いくぞ!!」
そして、その姿はあっという間に掻き消えていく。
ビザールカメレオンと呼ばれた怪人の能力。周りの人物を風景に溶け込ませ、見えなくしてしまう。
「助けろ!!」
セラヴィー博士があわてて手足をばたつかせる。
「待てっ!!」
あわててレッドが駆け出す。が、遅かった。
クイーンとセラヴィー博士はカメレオンと共に消え去り、後には静寂のみが残っていた。
「やられましたわね…」
グリーンがつぶやく。
「あいつ、ハナから囮やったんや…しもぅたなぁ…」
「うん…博士を…取り戻さないと…!!」
イエローとレッドが答える。
「あなたたち、気づいてる…!?事の重大さに」
「どゆこと?」
ブルーの問いかけにピンクが頭の上に「?」を浮かべる。
「ビザールが奉仕力を分析してしまったら…わたしたちは無力になるかもしれないですわ」
グリーンの顔色が悪くなった。
* * *
有栖川邸。
5人のご主人様である有栖川義之がメイドたちを前に立っている。その横にはメイド長白鳥さやか。
5人はテーブルの思い思いの場所に座っている。
「奉仕力ってのは…有栖川グループが発見したエネルギーなんだ」
「…そうだったわね」
涼子が相槌を打つ。
「わたしがビザールに反旗を翻し、いままで戦ってこれたのも…この力のおかげだ」
静かに聞き入るメンバーたち。
「奉仕力は人の感情によって展開されるエネルギーで、誰もが持っているが…個人差がある。」
「個人差?」
「お前たちとさやかさんの6人は、最もその奉仕力の潜在値が高かったんだ」
「だからビザールと戦うために私たちが選ばれたんだね…!」
「そうだ。メイドの採用試験のときに勝手に測らせてもらった…すまないと思っている」
千歳と義之の会話に、涼子がからんでくる。
「なるほどね、千歳がどうしてメイドに合格したのか理解に苦しんでたけど…そういうことだったのね」
「どういう意味よー!!」
むくれてみせる千歳。
だが、これは涼子と千歳のやさしさだった。
ご主人様の今の気持ちがわかるからこそ、あえて冗談めかして口をはさむ。
場を重くしないようにとの気遣いだった。
「その奉仕力を最大限に高めて制御するための装置がメイドギア…なわけ」
さやかが補足する。
「ご主人様とわたしの2人で研究してきたけど、正直、まだまだわからないところが多いエネルギーでね」
「爆発的に発生するときもあれば、出したいときに力が出ないときもあるだろう…?」
思い当たる千歳はうんうんとうなずいている。
「最近、やっとエネルギー学の権威であるセラヴィー・セラミック博士がそのエネルギーを人工的に作り出すことができる、って発表したところだったの」
「…最悪ね」
「わたしたちが制御しきれていない奉仕力を…ビザールが完全に掌握したら…勝ち目はないですわ」
ブルーとグリーンが深刻に話し合う。
「そういうわけだ。なんとしてもセラヴィー博士を助け出さないといけない」
「まずはてがかりを探しに…セラヴィー博士の屋敷に行ってみて。なにかわかるかもしれないから」
そんな深刻な場面を尻目に、イエローは愛の肩を抱いて部屋の隅へ誘導する。
「なぁなぁ、愛はん…」
「なに?イエローちゃん」
「…わかった?」
「ぜんぜん」
部屋から出て行った5人。残ったのは有栖川とさやか。
「わたしは…だめだね」
「どうしてですか?」
「こっちの都合で戦いに巻き込んでしまった彼女たちに…申し訳がたたない」
「…」
「奉仕力があれば、ビザールを叩きのめせると思った…しかし甘かった」
「おっしゃらないで」
「現実は…彼女たちをつらい目にあわせるばかりだ」
「それなら、メイドの募集を提案したわたしも同罪ですわ」
「さやかさん」
「わたしも、わたしひとりで戦うのは怖かったんですよ…」
「…」
「大丈夫…あの子たちは…わたしたちが思っているよりずっと強くて…優しい子たちですよ」
「…ありがとう…」
奉仕力の秘密を守るため、さらわれたセラヴィー博士を救い出せ!
ご主人様の思いを背中に受けて、ご奉仕戦隊出撃だ!!
がんばれ!メイドファイブ!!
次回!「奉仕力ビーム破れたり!」にメイドチェーンジ!
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