第18話 決戦!表と裏!(後編)

ピンチ。

メイドピンクの本能が危険を告げる。



「てこずらせてくれたでござるな…敵ながら大したものでござる」

必死に足に力を込めるが、動かない。ピンクのほほを冷たい汗が伝う。

「せめてひとおもいに散るがよいッ!」

メイドくのいちは動きがとれないピンク目掛けて突っ込んだ。勝利の確信。

くのいちの忍法によって、ピンクは完全に動きを封じられてしまった。

だが、ピンクの目はまだ輝きを失っていない。それどころか、冷静にくのいちが迫る様をみつめている。

「いさぎよし!!参る!!」

「ここッ!!メイドアーップ!!!」

突然のピンクの叫び。その言葉は光となってピンクを覆い、包み込んだ。

「な、何!?」

くのいちは突然現れた光の玉に突っ込み、そしてはじき飛ばされた。



一瞬、何が起こったのかわからず、倒れた体を起して輝きを見直す。

そこには、「メイドピンク・バースト」が立っていた。

いつもの愛らしさが残る戦闘服でなく、洗練されたスーツに身を包み、凛と立っている。



「メイドピンク…バースト!!いくにゅーっ!!!」

ピンクははじけるようにダッシュした。くのいちが目で追うより早く懐に飛び込む。

「しまっ…」

油断を悔いる声がピンクの拳で中断された。

ピンクの攻撃は止まることなくくのいちを打ち続ける。

「ふにゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅーっ!!!」

ひときわ大きな気合を込めて、アッパーを打ち上げる。くのいちはまともにくらい、空中へ投げ出される。

「う…うかつっ!!レッドはともかく…こいつまでバーストするなんてっ!」

「さよならにゅっ!シャボン・エクスプロージョン!!」

ピンクの声に無数の泡が応え、くのいちを包む。

「なにかと思えばまためくらましかッ!」

「これをただのアワーズと思うなっ…!!」

ピンクがぱちんと指を鳴らすと、泡はくのいちにむかって光り輝きながら凝縮していく。

「くおおっ」

圧迫されて苦しむくのいち。

エネルギーの泡が極限まで凝縮し、いままさにはじけようとする。

「ご奉仕ッ!!」

ピンクの叫びとともに、泡はため込んだすべての光のエネルギーを解き放ち、爆ぜた。

「う、うおおおおおっ!!!!」

くのいちの断末魔は光のなかにかき消され、静かに消えていく。

やがて輝きがおさまると、ころんと小さな玉がころがっていた。



「…やばかったにゅ…」



ピンクはその玉を大事に拾い上げた。



「萌枝ちゃん…勝ったよ…」







風に竹の葉が揺れる。

傷だらけのメイドイエローがメイドチャイナと対峙している。

イエローは息も絶え絶えに肩で息をしているが、チャイナのステップはまったく衰えていない。

「どうしたアル!?もうここまでアルか?」

「くそう…ほんますばしっこいなぁ、たまらんわ」

一撃の重さはイエローに分があるものの、それが当たらなければ意味が無い。いわゆるジリ貧というやつである。

「おんどらーっ!!」

それでもイエローはチャイナに向かって攻撃し続ける。

蹴り、拳を幾度と無くくりだす。

時にはいい角度で当たりはするのだが、竹を利用したチャイナのいなしに、たいした効果が上げられない。

逆に大振りのスキをつかれて、ピンポイントに蹴りをくらってダウンする。

もんどりうって倒れるイエロー。ダウンの追い討ちに飛んでくるチャイナをやっとの思いでかわす。

「そろそろ観念するアルねっ!」

イエローの直感が「やばい」と告げる。

「とどめアルっ!裏奥義、暗黒流星撃!!!」

メイドチャイナの切り札が発動する。

「奥義でしとめるアル!」

チャイナは力強くジャンプすると、空中で回転してイエローに向き直る。

「暗黒!流星!撃ーっ!!」

決めセリフとともに、チャイナの繰り出す蹴りが唸りをあげてイエローを襲う。

「ここや!!」

気合一閃、どしんと構えるイエロー。

「観念したアルねっ!!」

「んなワケあるかいっ!メイド・アップや!!」

イエローの言葉が引き金になり、光の渦が2人を包む。



「な、そんなっ!!」

「捕まえたでぇ!!」

チャイナの必殺の蹴りは、見事にイエローに受け止められていた。

「自分の強さ、見切ったで!」

「な、なぜアルっ!わたしの攻めは完璧だったはずアルっ!!」

「要は、ウチの力を利用せんとなんもできへん、ちゅうことやろうが!!」

イエローはチャイナの両足を肩に抱え上げ、体を起こしてチャイナの体を振り上げた。

「イエローメガトンボムや!!」

そして、一気に地面めがけてチャイナの体を打ちつけた。

すさまじい音が響く。チャイナの呼吸が一瞬止まる。

「とどめっ!!」

すばやくバックにまわり、チャイナを背中から抱きしめるイエロー。

「おんどりゃああああっ!!」

そのままイエローの体は美しい弧を描いてブリッジする。

ジャーマンスープレックス。

チャイナの後頭部が再び地面に叩きつけられた。

「カウント3やな!」



「…負けたアルか」

「そういうこっちゃ。命まで取ろうってワケやない。はよ萌枝はんの玉出し。」

力が入らずに倒れこんだままのチャイナの横に、イエローがあぐらをかいて座っている。

「仕方ないアル。これアルよ」

チャイナは懐から緑色に輝く球体を取り出した。

「素直でええな。おおきに。」



イエローは緑の玉を大事そうにしまうと、ちらりとチャイナを見る。

「あんな…」

「何アルか」

「正直、自分のことそんな悪いヤツや無いように思うんや」

「…」

「屋敷でうちらのこと、助けてくれたやろ」

「あれは…シャドゥの気まぐれにつきあっただけアル」

「ビザール潰し終わったら敵味方もないやろ、またメシ食いにきたらええ」

「それは…できないアル」

「ええやん別に」

「ビザールの掟…負けた戦士は消滅するアルよ」

「…!なんやて!?」

チャイナの体が煙のように蒸発し始める。

「ごはん…おいしかったアルよ…」

最後に、それだけがイエローの耳に届いた。



「そういうことは先言うとけ…くそほんまに!」

イエローはそっとつぶやくと、駆け出した。仲間の元へ。







ともに遠距離攻撃を得意とするブルーとエスパーの戦いは膠着していた。

時折投擲武器で牽制しあうが、効果的な攻撃ができないまま、時間が過ぎていく。



…目!額の目…!!狙いはそこだけ!!



「何を考え事してるのッ!!」

エスパーの放つナイフがブルーを襲う。

それをトレイではたきおとすブルー。



「ええーい、イライラするぅっ!!」

エスパーが苛立つ。

「もうこんなのやってらんない!決めにいくよッ!!」

辺りに落ちている木切れを何本か超能力で浮かびあがらせるエスパー。



「!?何?」

慎重に身構えるブルー。

「念力!!」

エスパーが両の手に力を込めると、集められた木切れは1本に融合し巨大な槍となった。

「いやーっ!!」

その槍をブルー目掛けて力の限り投げつける。

槍の穂先にまがまがしい黒いオーラが宿り、不気味に光る。



「そんな技!」

ブルーはジャンプしてかわす。

だが、その槍は空中でカクっと方向転換し、再びブルー目掛けて飛ぶ。

その不規則な動きに惑わされたブルー。

かろうじて直撃は免れたが、メイド服の肩部分が切れ、中から血が噴出した。

「くうっ…しまった…!!」

「いい感じじゃない、エスパー・ジャベリン!!いけ!!」

再びブルーに向かって飛び立つ槍。

とっさにトレイで払おうと構えるブルー。

ぎゃりん!と金属音がして、ブルーのトレイは2枚いっぺんに槍に打ち抜かれ、地面に串刺しにされた。

「そ、そんなっ!」

文字通り鉄壁の守りを誇っていたブルーのバックラートレイ。

しかし、それも両手にトレイを装備していればこそ。

トレイが無ければ奉仕力カッターも打てない。



「ブルー!今度こそもらった!!」

ブルーは攻撃力も防御力も半減したとみたエスパー。

ここぞとばかりに攻めに転じる。

空中に浮かぶナイフと、自らの打撃で的確にブルーにダメージを蓄積していった。

「く、くうっ!」

「ふっとべ!!」

エスパーの蹴りがブルーを捕らえ、弾き飛ばす。

ブルーは、ちょうどトレイを地面に串刺しにしている槍に叩きつけられ、倒れた。



「うふふ、勝っちゃった!メイドブルー、あんたの弱点は…トレイがないと全然ダメダメってことね!」

勝利を宣言するエスパー。

「…まだよ…まだ切り札を見せてないっ…」

槍にすがるようになんとか立ち上がるブルー。

「そんなもの、使わせるもんかい!!」

容赦なくブルーにとどめを刺そうと飛び掛るエスパー。

「メイド・アッープ!!」

掛け声でメイドブルー・バーストに変身したブルー。

「やっぱりね!でもいくらパワーアップしても、武器が無ければいっしょでしょ!!」

「武器なら…ここにあるわっ!」

ブルーは槍を引き倒すと、穴の開いたトレイを構えた。

「そんな壊れたトレイで!」

エスパーは勢いを弱めることなく突進する。



次の瞬間。

ズガっ。

エスパーの脳天に衝撃が走った。

完全に油断していたエスパーは、地面に叩きつけられる。

「な、何っ!?」

「額の目…潰したわ!」

エスパーの力の源、額の目に的確な一撃。その目は完全に輝きを失っていた。

「そ…その武器はっ!?」

「名づけて、奉仕力ヨーヨー!!」

ブルーは、二枚の穴の開いたトレイを背中合わせに組み合わせ、

とっさに引き抜いた腰のリボンでそれをコントロールする新必殺技、奉仕力ヨーヨーを完成したのだ。

「続けて!」

ブルーは力の限り、ヨーヨーを投げつける。

額の目を潰され、力を失ったエスパーはそれをまともにくらう。

「わたしが…負けるっ…!?」

「終わりよ!」

いつのまにかエスパーの懐に飛び込んでいたブルー。

そのまま拳を打ち上げ、エスパーのみぞおちを完璧に捕らえる。

鈍い音がしてエスパーがくずおれ、どさりと倒れた。



「…なんとか…勝てた」

エスパーの体は音を立てて煙になっていく。

蒸発したように消えうせたそこには、緑色に輝く球体が転がっていた。

それをそっと拾い上げるブルー。



「萌枝…もう少し、もう少しガマンしてね」







対峙する赤と影。

「やっと本気を出したね」

シャドゥがにやりと笑う。

レッドはすでに、奥の手の「メイドレッド・バースト」に変身していた。

「仕留める!!」

レッドはそれまでのダメージが嘘のように軽やかに跳躍した。

「知ってるよ!3分!それだけ経ったらボクの勝ちだ!!」

「それがどうしたあーっ!!」

変身により、威力も速度も数段あがっているメイドレッドの攻撃。

無数に繰り出されるパンチと蹴りがシャドゥを襲う。



「…っ!!さすがに!!」

シャドゥの表情から余裕が消える。

とりあえず回避に専念して攻撃の筋を読む。



「いやぁあっ!」

レッドが左手で右手の甲を押し出すように肘を打ち込む。

「ちぃっ!」

それまですべてを避けきっていたシャドゥがたまらず手で払う。

いなされた形のレッドは、そのままくるりと回転し、鋭く後ろ回し蹴り。

「くらえ!」

体勢をやや崩していたシャドゥはこの蹴りを肩に受け、膝をつく。

この戦いで、はじめてのレッドの有効打だ。

「くそっ!」

シャドゥが立ち上がろうと肩膝を立てる。

「逃がさない!」

レッドはすかさずシャドゥが立てた膝に乗り、シャドゥの後頭部に強烈に蹴りを見舞う。

「…っ!?」

前のめりに倒れるシャドゥ。

レッドは飛び上がり、追い討ちを狙う。

「もらった!!」

シャドゥはあわてて体をひねり、かろうじて追撃をかわす。

「甘いよ!」

そのままレッドの足を払う。つんのめってバランスをくずすレッド。

その間にすかさず体勢を立て直し、再びレッドに向き合う。



「…」

レッドが真剣な表情で間合いをはかる。

「どうした?あと1分もないんじゃないか!?」

「10秒あれば!」



レッドはがしっと両拳を握り、頭上にかざす。

そのままゆっくりとその手を広げ、腰の横に構える。

「わたしの最高の技で決める!!」



それを聞いてシャドゥがうれしそうに笑う。

「…最後の勝負ってわけ?いいね、その覚悟!!」

シャドゥもレッドに習い、両手を腰に構える。

「影が光を超える時が来たんだ!!」



両者の気合が高まっていく。



レッドは右腕を引き絞り、すべての力を拳に集める。

拳から赤い光が漏れ出し、それはだんだんと輝きを増していく。

「わたしのすべてをこの拳に掛ける!!」

シャドゥの拳も黒く輝く。

禍々しいオーラが全身から立ち上り、陽炎のように風景がゆれる。

「これで…決める!!」



「レッド・インパルス!!」

「シャドゥ・インパルス!!」

掛け声が重なるように響き、二人は弾けるように地面を蹴る。

「やあああああああっ!!」

レッドが渾身のストレートを繰り出すと、その拳から奉仕力の波が解き放たれ、

衝撃波となってシャドゥに向かう。

「くらええええええっ!!」

シャドゥは絶叫とともに全力の蹴り。つま先から暗黒の力が波動する。

それは怪しくうねりながら、レッドを襲う。



2つの光は激しい音と光を上げて鍔迫り合った。

「うおわあああっ!!」

「くおおおおおっ!!」

2人はすべての力と思いを乗せて、あらん限りのエネルギーを放射する。



やがて、黒い光が赤い光を押し始めた。

「…押されてるッ!!?」

「勝った!!」

ここぞとばかりに気合を最大限に高めようとするシャドゥ。

が、その瞬間、3つの意識がシャドゥの中に流れ込んできた。

それは。

メイドくのいち。

メイドチャイナ。

メイドエスパー。

2人の最期の意識だった。

「…こんなときにぃいいいっ!!」

裏メイド戦隊は一心同体。彼女たちの意識は常につながっているのだ。

3人の敗北…すなわち消滅は、シャドゥの心を惑わせた。

「いけえええええっ!!」

「…!!」

レッドの光が弱まった黒い力を弾き、シャドゥめがけて流れ込んでいく。

「ボクが…負けるッ…!!?」

赤い光がシャドゥを包む。

それは大きな球体になってシャドゥの体を覆い隠した。

「レッドインパルス・フィニッシュ!!」

爆発。

球体の中だけが激しく爆発し、シャドゥはその爆風をまともに浴びる。

「う、うわああああああっ!!!」



レッドはその球体を背に立ち、拳を握る。

「ご奉仕ッ!!」





シャドゥは倒れていた。

いや、正確にはかつてメイドシャドゥだった少女が倒れていた。

「負けた…完全にボクの負けだ…」

「萌枝ちゃんの魂を返してっ!」

変身の解けたレッド…千歳が、シャドゥに詰め寄る。

「…ほら」

シャドゥはあっさりと千歳に緑の玉を渡す。



沈黙のあと、千歳が我慢できない風に口を開いた。

「ねえ、ひとつだけ教えて」

「…なんだ?」

「どうして私を助けてくれたの?」

「…ふふっ、なにかと思えば…」

「答えて!!」

「お前を倒すのは…この…ボクなんだか…ら」

シャドゥの声は掻き消えていき、体は煙のように蒸発していく。

「…」

「楽しかった…よ…」



そして、千歳は一人立ち尽くす。



「千歳ちゃん!!」

「千歳はん!!」

「千歳!!」

3つの方向から声がかかる。愛とイエローと涼子。

その手には緑に輝く萌枝の魂。

愛が叫ぶ。

「これで…萌枝ちゃんが…帰ってくるにゅっー!!」

千歳は答えた。

「うん!!帰ろう、私たちのお屋敷へ!!」







萌枝の体がベッドに横たわっている。

周りに心配そうにみつめる千歳たちが立っている。

「どないなん?」

イエローが心配そうにさやかを見る。

「…これで大丈夫なはずなんだけど…」

有栖川も心配そうに見ている。

「萌枝…」



やがて、静かに萌枝の目が開き始めた。

「!」

「あ!」

「萌枝ちゃん!!」

萌枝は上半身だけ起き上がり、みんなの顔を端から順番に見やる。

千歳。涼子。イエロー。愛。さやか。…義之。

そして、照れたように笑い、うれしそうに挨拶した。

「…ただいまですわ」

囲む5人の声が重なる。

「おかえり!」





裏メイド戦隊を見事撃退したメイドファイブたち!!

しかし、背水の陣のビザールクイーンが再び迫り来る!!

闘えメイドファイブ!ビザール帝国を叩き潰すその日まで!

次回!「狙われた奉仕力!」にメイドチェーンジ!!