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第15話 戦いの意味
「まずい、これはまずすぎる・・・。」
ドクターVは秘密研究所に向けて逃走していた。
逃走の邪魔以外の何者でもないのだが、どうしてもグリーンの体を捨てられなかった。
ビザールウルフがクイーンに取って変わられた今、ビザール帝国には戻れない。
こうしてグリーンの体をもっている以上、メイドファイブたちもワシを逃がすまい・・・。
「かくなる上は」
ドクターVの目が鈍く光る。
「ワシ一人でメイドファイブを始末するしかなかろう!そうすれば帝国に胸を張って帰れる・・・
なにより、このすばらしい肉体を失わずにすむのじゃから!!」
そう言うが早いか、その天才的な頭脳はメイドファイブを倒すための作戦をはじきだしていたのだった。
有栖川邸。
度重なる連戦。グリーンの死。
メイドファイブたちの士気は低かった。
とくに、メイドピンク・・・桃園 愛は疲れきっていた。
自分の失態からグリーンを失ったようなもの・・・。
だれも彼女を責めないが、それがまた辛かった。
「お買い物、いってくるにゅ・・・」
元気なくでかける愛。
メイドレッド、千歳があわてて後を追う。
「愛ちゃん!待って!!」
「大丈夫かなぁ、愛はん・・・。」
「あなたと違って愛は繊細だから・・・どうかしらね」
イエローと涼子も心配しているようだ。
心ここにあらず、といった感じで適当に買い物を済ませる愛。
それをフォローして回る千歳。
帰り道。
「・・・?」
ふと見ると、道端に1人の少女が倒れている。中国の人民服のようないでたち。
その倒れた少女を抱くように座っているもう一人の少女。黒いトレーナーと黒いGパンで色を暗く統一した服装。
「どうしたの?」
あわてて駆け寄る千歳。愛も続く。
行き倒れの2人の少女は、力ない視線を千歳に向けた。
「な、なんでもない・・・ちょっと、行き倒れてるだけだよ・・・。」
座っている黒服の少女が振り絞ったような声で答える。
倒れたほうの少女はうわごとのように「おなかすいたアル」を繰り返している。
「い、行き倒れって・・・」
「おなかすいてるにゅ?」
愛の言葉に反応して、飛び起きる中華少女。
「すいてるアル!すいてるアル!!」
「やめろ!ボクたちはいつからそんなにいやしくなったんだ!!」
そう言った黒服の少女のおなかが、グーっと大きく鳴った。
「あ」
顔を真っ赤にする。
「よかったら、うちに来ない?食事くらいなら出せるよ」
バクバクガツガツパクパクムシャムシャ。
あらゆる擬音を発しながら、ものすごい勢いで食べまくる、中華少女。
「・・・ごめんなさい」
それを横目に、恥ずかしそうにあやまる黒服少女。
「これ、むちゃくちゃおいしいアル!!あんたももっと食べるアル!!」
「ちょっとは遠慮してみせたらどうなんだよッ!」
あっけにとられる有栖川家のメイドたち。
「ほんま、よう食うなぁ、自分ら」
「おいしそうに食べるにゅ」
「いいよ、おかわりいっぱいあるから、遠慮しないで」
「アイヤー!!うれしーアル!!」
「もう・・・」
2人の豪快な食べっぷりを見て、なんだかちょっとほっとする千歳。
「うふふ」
愛もどことなく笑顔を浮かべている。
「いっぱい食べたら、眠くなってきたアルよ」
「こら!!あつかましいにもほどがあるぞ!!」
「いいよ。部屋空いてるから、休んでいったらいいよ。」
「すまない。感謝するよ」
「ありがとアル!!」
2人を千歳が案内して空き部屋に通す。
「じゃ、ここのお部屋自由に使ってね。お宅には連絡したの?」
「ウチ?いや、ウチは・・・」
「いろいろあって、みよりがないアルよ」
「・・・そう。まあ、ゆっくりしていってね」
ほどなく、寝息を立てる2人。
よほど疲れていたのだろう。
千歳はお茶を持ってきたが、ドア越しに聞こえる寝息といびきに気づいて、
そっと引き返したのだった。
しばらくして。
地下にあるブリーフィングルームに集まっているメンバーたち。
これからのことを考えようとしているのだが、言葉は無かった。
・・・なにやら表が騒がしかった。
大勢の人間が騒いでいるような声が聞こえる。
「・・・なんだ?表がうるさいが・・・。千歳、すまないがちょっと様子を見てきてくれないか」
有栖川が千歳に命じる。
「はい、ご主人さま!」
むりやり元気な声を出して、千歳は階段を登っていった。
「嫌な予感がするわ」
涼子がつぶやいた。
「おまえらがいなければ平和になるんだ!!」
「有栖川の連中はいますぐここから出て行け!!」
「メイドファイブはもういらないんだ!!」
門の前で騒ぎ立てる群衆。
「な、なによこれっ!!」
千歳が取り乱す。
この地域にすむ住人たちが大挙して有栖川邸におしかけているのだ。
「どうなってるの!?」
群集のなかに見知った顔がいる。あわてて問い掛ける千歳。
「なによこれ?どうなってるの?」
男が答える。
「千歳ちゃんには悪いけど、有栖川邸は立ち退いてもわらないといけない!」
「そうだそうだ!!」
「はやく出て行け!!平和のために!!!」
平和のために・・・?どうして?
なにがあったの?
考えがまとまらずパニックを起こす千歳。
群集の一人が持つラジオが大音量で言葉を吐き出している。
聞け、日本の者どもよ。ワシはビザール帝国の科学者、ドクターVじゃ。
ワシはここに宣言する。有栖川邸に住むメイドファイブたちを我々に引き渡せば、日本は決して攻撃しない!
そもそも、ワシらは武力を持って侵攻する気などまったくなかったのじゃ!
ワシらは平和的な話し合いを望んでいるのじゃ!
それが、メイドファイブたちの度重なる抵抗で、やむなく戦闘状態に入ったのじゃ!
このまま不本意な戦闘を続けるのは忍びない。そこで、日本の者どもに最後の機会を与えよう!!
メイドファイブと有栖川を、ビザールに引き渡せ!!
さすれば、おまえたちの平和な生活は保障してやろうぞ・・・・・・!
そこに、有栖川とメンバーたちが駆けつけた。
「千歳!とりあえず戻れ!ビザールにやられた!!」
有栖川が叫ぶ。
「やられた?何があったの?」
「ええから、はよ戻りぃ!!」
イエローの叫びが千歳を我に返した。
騒ぎ立てる群衆を尻目に、玄関にこもる千歳たち。
「どういうこと?」
まくしたてる千歳に涼子が答える。
「ビザール帝国のドクターVと名乗るヤツが、さっきからずっとあらゆる電波で呼びかけているの」
「何を・・・?」
「あいつ、『メイドファイブがこの屋敷から立ち退けば日本は攻撃しない』って宣言したのよ」
「そ、そんな!じゃあ・・・。」
「そうね。それを間に受けた人たちが押し寄せているんだわ」r
「ちゅうかあいつ、ウチらがメイドファイブやって、おもいっきりバラしとったからなぁ。」
イエローが補足を入れる。
「そうね。いままで隠してた分、反動も大きいみたいだわ。」
「また、うまいこと説明しよんねん。ビザールが日本を攻めるのはメイドファイブのせいになってしもうてる」
「そんな!!」
守るべき人たちからさいなまれるという事実に、千歳は殴られたようなショックを受けた。
激しい音がした。どうやら、お屋敷の門が破壊されたようだ・・・。
群集は大挙して玄関まで押し寄せてきた。
「出て来い!メイド共ーっ!」
「とっととおまえらを引き渡すんだよ!!」
「おまえら、俺たちを守りたいなら、出てこいよ!!守ってくれよ!ええ?正義の味方さまよぉーっ!?」
「そうだそうだ!お前らさえでてくりゃ平和になるんだよ!とっとと出てきやがれっ!!」
「・・・・・・!?」
あまりの雑言に耳をふさぐ愛。
激しくたたかれるドア。破られるのも時間の問題かも知れなかった。
「ひどい・・・ひどいにゅ」
「正直、あんなのを守ってると思うとやりきれないわ」
「かなわんなぁ、しょうみなハナシ。」
「少々痛い目にあってもらうしかないかもね、あの人たちに」
「ダメ!!それはダメ!!!」
涼子の提案を激しく否定する千歳。
「わたしたちがここを出る・・・それがどういう意味なのか。わからないわけじゃないでしょ?」
「でも、でもッ!!!」
「わたしたちは正義を、平和をまもらなくちゃならないのよ?ここでもし・・・のこのこ出て行ったら・・・」
「・・・・・・。きっと、でていった瞬間フクロにされて終わりやろうなぁ・・・。」
「まちがいなく、ビザールは世界を征服するでしょうね」
「せやろな」
「わかった?千歳。私たちがお屋敷・・・いえ、基地を離れたら・・・その時点で負けなのよ」
「・・・」
「出て行って、どうするの?戦うのもタダじゃできないのよ。お金はどうするの?食料は?着るものは?」
「・・・」
「あの騒いでる人たちはちょっとおとなしくさせるだけ。そうしないと・・・」
「でも、それは・・・正義じゃない!!」
「千歳!」
「守るべき人たちを痛めつけるなんて・・・間違ってる!!」
「そうしないと正義も何も言えなくなるってのがわからないのッ!!?」
「わからないッ!」
「じゃあ、このまま出て行って殺されて終わり?それでいいの?」
「よくないッ!」
「どうするつもりなのよっ!!」
「あの人たちを助けて、ビザールもやっつける!!」
そう言うが早いか、千歳は玄関を開け放った。
「千歳っ!!!」
涼子が叫ぶ。
部屋の窓から外をうかがう、中華娘と黒服少女。
「シャドゥ!ドクターVアルよ・・・。あいつ、わたしたちを追ってきたアルか?」
「いや・・・どうやら作戦行動中のようだ・・・あいつらしい姑息な手を使ってる」
「どうするアル?」
「とりあえず様子見だ、チャイナ。いつでも動けるようにしておくよ」
「お!出てきた出てきた!!」
「ようやくお出ましか、お前ら!!」
沸き立つ群衆。
「待ちくたびれたぞよ、メイドファイブたち。ようやく観念したとみえる」
群集を煽動している本人、ドクターVがずいっと進み出てきた。
「みんな!聞いて!!!」
千歳が声を限りに叫ぶ!
ドクターVの巧妙な群集操作で大ピンチのメイドファイブ!!
正義を、平和を守るにはどうしたらいいんだ!?
そして、シャドゥとチャイナの動向は・・・!?
次回!「影の中の光!」に、メイドチェーンジ!!
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