第11話 ピンクの初恋

有栖川が研究室にこもっている。

「失礼します」

メイド長、白鳥さやかがお茶を運んできた。

「どうですか、御主人さま?」

「ん、もうすぐだ。これでメイドファイブはもっとパワーアップできるぞ。」

「裏メイド戦隊…手ごわいですから。」

「いま作ってる新兵器があれば…必ず勝てる!!」





「イエロー、今日はわたしたちが買い物当番にゅ。夕飯のお買い物に行くにゅ。」

「頼むでぇ、片岡!!去年のお前とは違うはずや!男見せぇ!!」

「イエロー?」

「おあー!!なんであの球見逃すねん!!やる気あんのか!?」

「…イエロー?」

「なんや、結局三振かいな!!帰れ!!」

「…一人で行くにゅ…。」



メイドピンクこと、桃園 愛。今日は阪神のデーゲームが組まれているおかげで、

夕飯の買い物に一人で行くハメになった。



「まったく、あんな球遊びのなにが面白いにゅ?」



屋敷全員分の夕飯ともなると、かなりの量だ。バカ力のイエローが来ないと、大変だ。



買い物カゴをひきずりひきずり帰路につく愛。

そのとき、前方の視界を何者かがさえぎった。



「!」



愛の目前に現れたのは、ビザールコマンダー。

ビザール帝国の戦闘員だ。



「ビザールにゅ!?」



とっさに身構える愛。



変身前のメイドファイブたちは、特別な力を持っているわけではない。

それでも、千歳や涼子、イエローたちなら、コマンダー相手に遅れをとることはないだろう。

だが、愛は変身前は本当にどこにでもいる普通の少女だ。



敵の目前で変身しても、メイドピンクに変身完了するまでの無防備な時間を作ってしまう。

それは、無謀といえた。



「ぐふほほほ…」



異様な笑い声を上げながら、愛にせまるコマンダー。



「…やられるにゅ!!」



その瞬間、コマンダーはうめき声をあげて、その場に倒れた。



「にゅ?」



状況が判断できない。



見ると、誰かがコマンダーと戦っている。見たことのない男だ。



「こんな女の子をいじめて恥ずかしくないのか!?」



男はそう叫ぶと、渾身のパンチをコマンダーに放つ。

コマンダーはあえなく倒れ、逃げていった。



しりもちをついた体勢のまま、ぽかんとみていた愛のもとに、その男が近寄ってきた。



「大丈夫かい?」









「〜っ!!」

声にならない叫び。

美形。かなりの男前。

長身で、引き締まった肉体。切れ長の目。通った鼻筋。さらさらの髪。

ズバリ、「ツボ」というヤツである。



「立てる?」

彼の差し伸べた手を握る愛は…

恋をした。

普段から少女漫画に傾倒している彼女は、このシチュエーションにまいってしまった。



「ありがと…」

語尾に「にゅ」をつけるのも忘れ、男の顔をみつめる。



「よかった、怪我はないみたいだね。最近はビザールとかいう連中がうろうろしてるから、気をつけなよ。」

「あ、…あの」

「何?」

「お名前…聞いていい…?」



男はクスッとさわやかな笑みを浮かべると、

「俺…?俺は狼牙。「おおかみ」に「きば」で、ろうが。」

と答えた。

「狼牙さん…ありがとう…」

「気にしないで。俺、空手やってるし、ああいうのぐらいなら、負けないから。」

「あ、私、愛!桃園 愛!!」

「愛ちゃんか。かわいい名前だね。じゃあ、気をつけて!」



颯爽と立ち去っていく彼の後ろ姿を、愛はいつまでもみつめていた。













「愛ちゃん?」

「…」

「愛ちゃん?夕飯できたよー。」

「…いらない…にゅ…」



夕飯の用意が整って、愛の部屋に知らせにきた千歳。

しかし、にべもなく断られ、とまどう。

「今日は愛ちゃんの買って来てくれたお肉でハンバーグだよ?おいしいよぅ?」

「…いらない…」



「…もう眠たいのかな?まだ子供だし、しょうがないか…」

千歳は愛を呼ぶのを諦めると、食堂に帰っていった。





愛は、ベッドに突っ伏していた。昼間に出会った彼、狼牙のことがずっと胸の中から消えない。

「狼牙くん…」

きゅっと痛くなる胸を押さえ、いままで味わった事の無い痛みに耐えている愛。

「かっこよかったにゅ…」



気持ちを静めるために、外の空気を吸おうと窓を開ける。

ひやっとした気持ちいい風が通った。

そして、窓のそとの見慣れた景色を見た愛は、我が眼を疑った。



「やあ、また会ったね」



そこには…彼、狼牙が立っていたのだ。



「…!」

驚きと興奮で舞い上がる。



「ごめんね、君のことが忘れられなくて…迷惑だったかな?」

「め、迷惑なんてこと無いにゅ!!うれしいにゅ!!!」



屋敷の厳重なセキュリティに捕まらずにそこにたっている狼牙。

しかし愛はその矛盾に気付かない。



「俺といっしょに…来てくれるかい?」

「行く!行くにゅ!」



窓から飛び出す。

裸足のままだが、気にならない。



そして2人は、夜の闇へ消えていった。















部屋がノックされた。

千歳の声。



「愛ちゃーん、夕飯持ってきたよー。おなかすいたでしょ?」



返事は無い。



「愛ちゃん?」



気配がしない。



「入るよ?」



そして、愛の部屋に入った千歳が見たものは、開け放たれた窓だった。



「愛ちゃん…?トイレかな?」



疑問に思いながらも、トレイを部屋のテーブルに置き、立ち去る千歳。











次の日。



有栖川家はざわついていた。



愛が行方不明。



朝のミーティングに姿を見せない。部屋にもいない。

メイドファイブたちによって、邸宅の捜索がなされたが、どこにもいなかった。



「ご主人様!やっぱりおらへん!」

「こちらも見つからないですわ」

「こっちもダメね」

「ダメ!!いないよ!」







そのとき、侵入者ありを告げるサイレンが鳴り響いた。

「侵入者あり!侵入者あり!メイドファイブ出動せよ!」



「あー!もうこんな時に!!」

変身しながらポイントに向かうメイドファイブたち。



もちろんピンクはいない。



「ピンクがおらへんかったらうかつに突っ込まれへんなあ」



イエローがつぶやく。

彼女たちの突貫が勝利を重ねてきたのは、

ピンクのヒーリングのおかげだといっても言い過ぎではない。

そのピンクがいない。



厳しい闘いになる、誰もがそう予感していた。

















屋敷の庭先に裏メイド戦隊が侵入していた。

「メイドレッド!!今日こそお前を倒す!!」

メイドシャドゥが吼える。



「しょうこりもなくまた来たね!!」

レッドが威嚇する。



「あれは…?」



裏メイド戦隊の後ろに、見慣れない影がいた。



「はじめまして、メイドファイブの諸君。」



「誰?」

ブルーが問う。



「俺はビザールウルフ。裏メイド戦隊の指揮官さ。」



「指揮官?」

驚くブルー。



「あほやな!!指揮官自ら出てくるってことは組織滅亡も近いってことやで!!」

イエローのツッコミ。





「ふふ、そんな戯言はこちらの奥の手を見てから言ってもらおうか!」

ウルフの指し示す空間に、突如人影が現れた。



「ピンクさんですわっ!!?」



そこにはメイドピンクが立っていた。

ただ、全身をまがまがしい戦闘服に包んで。



「ピンク!?」

「…お前っ!!ピンクになにをしたっ!!」

慌てるメイドファイブたち。



「なに、こいつが俺の役に立ちたいっていうから、改造させてもらっただけさ。」

「改造ですって?」

「ビザール帝国が誇る科学者、ドクターVが脳髄までいじったんだ。もうこいつはビザールの奴隷さ!!」

「そんな・・・っ!!」

「くく、こいつは俺のためならなんでもしてくれるんだってさ。もちろん、メイドファイブを倒すってこともな!!」

「そんなアホな!!」

「そうだろう?シャドゥピンク!?」

「はい…わたしは…ウルフ様のためなら…殺ります…」



「行け!!!」



跳躍する裏メイド戦隊とシャドゥピンク!



「メイドファイブ…殺す!!」

叫ぶシャドゥピンク!!





大変だ!メイドピンクがビザール帝国に洗脳されてしまったぞ!!

ピンクはシャドゥピンクとなってご奉仕戦隊を襲う!

果たして、メイドファイブたちはピンクを救う事ができるのか?それとも…!!



次回!「届け!この想い!!」にメイド・チェーンジ!!