第9話 10トン鉄球!メイドエスパー!!

密かに、有栖川邸に到着した裏メイド戦隊の4人。

「で、誰からいくアルか?」

もちろん自分が真っ先に飛び込んで行きたいのだろう、メイドチャイナが興奮気味に言った。

「しかし、殿にも様子見と念押しされて御座る。ここは拙者が」

メイドくのいちも負けじと出番を主張する。

「みんな一度に飛び込んで手の内を見せていたら、どっちが偵察されてるのかあやしいな。」

メイドシャドウがもっともな主張。

「じゃんけんね。」

メイドエスパーの一言で、全員が身構えた。

「最初はグー!!じゃんけんぽん!!」





「なにか、庭先でへんな声が聞こえますわ」

グリーンの報告にメイドファイブの5人が駆けつけてみると、

見慣れない扮装の女の子たちが、ひたすらじゃんけんをしつづけていた。

「なんやねんおまえら!!」

イエローが威嚇する。

「うるさいアル!いま誰が出て行くか決めるから、それまで待つアル!」



「あいこでしょ!あいこでしょ!」

「なんだかなあ…」

レッドが溜息をついた。



「やりぃ!」

メイドエスパーが大きな声を上げた。勝負は彼女が勝ったようだ。

「卑怯アル!こいつ、心読んでるネ!!」

「そんな証拠、あるのかしら〜?」

ふふん、と笑ってみせるエスパー。

「と、いうわけで、お相手するわ!」



4人の侵入者をあっけにとられて見ていたメイドファイブの5人。

彼女たちの前につかつかと歩み寄る、濃緑のメイド服の少女。

「あ、あなたは・・・?」

思わずたずねるメイドレッド。

「わたし?わたしはね…」

嬉しそうにくるりと周り、ぴしっと決めポーズ。

「ビザール帝国、裏メイド戦隊副隊長、メイドエスパー!!」



「う、裏メイド戦隊!?」

突然の名乗りに、緊張が走った。

「行くわよ!」

メイドエスパーがふん、と気合の発声をすると、彼女の額にある縦長の筋がゆっくりと開いていく。

そこには真紅の目があった。

その目がきらりと光ったかと思うと、エスパーの身体がふっ、と浮き上がった。

「え!?」

意表を突かれたメイドファイブたち。

数メートルの高さから、急降下してキックをくりだすエスパーの攻撃を、イエローが受けた。

イエローは、頭上で腕をクロスさせ、蹴りを受け止めた…かに見えた。

受けきったと思った瞬間、衝撃がイエローを圧迫し、彼女はもんどりうって後ろに倒れた。

「うあ!」

「イエローさん!」

グリーンの叫び。

吹き飛ばされたイエローの方に視線を向ける。

「あかん!後ろや!!」

「え?」

空中にあるはずのエスパーの身体が、グリーンの背後にあった。

「遅いわ」

エスパーはニヤリと笑うと、手のひらをグリーンの背中に打ちつけた。

「うああっ!」

まるでダンプカーに衝突されたかのようなショック。

グリーンも吹き飛び、地面を滑った。



「…あんたたち…弱いわ」

エスパーが手をひらひらさせながら勝ち誇る。

「なめるんじゃないわよ!ピンク!」

「うん!!いけっ、シャボンアワーズ!!」

ブルーの声に応じて、ピンクが得意技のシャボンアワーズを繰り出す。

無数の気泡が発生し、エスパーの周りを囲む。

「目くらまし・・・ね」

エスパーの視界は完全に途切れたはずだった。

「奉仕力カッター!!」

ブルーの投げたトレイが鋭利な刃物となって、メイドエスパーを襲う。

ピンクのアワーズでどこから来るかわからない状態だ。

直撃を確信するブルー。



「な、なにっ!」

シャボンアワーズが引くと、エスパーはそこに無傷で立っていた。

奉仕力カッターは、エスパーの前に、動きを止めて浮いていた。

「奉仕力カッターが…効かない!?」

「うふふ、わたしの得意技、テレキネシス。飛び道具は絶対にわたしに当たらない!」





「あいつ、自分で手の内ばらしてるネ」

メイドチャイナが面白くなさそうにつぶやく。

「好きにさせるさ」

メイドシャドゥが応える。

くのいちは無言。





「それなら接近戦だ!」

モップをかざしてレッドが飛び掛る。立ち上がったイエローとブルーもそれに続く。

「くらえ!百烈モップ!!」

レッドが必殺の百烈モップを仕掛ける。無数の攻撃がエスパーを狙う。

ブルーのキック、イエローのパンチ、そしてレッドのモップ。

3方向からの攻撃は、エスパーを逃がさない。完璧。

そして、次の瞬間3人は同士討ちし、倒れていた。

お互いの攻撃をまともにあびてしまった3人。特に、レッドのモップをしたたかにうけた

ブルーのダメージが大きいようだ。

「な、なぜ?」

「テレポーテーション!わたしに単調な攻撃は通用しないわ!」





「つ、強い…」

レッドが歯噛みする。

「今度はこっちから行くわよ」

メイドエスパーは、ひときわ大きな雄叫びをあげた。

「うおおおおおお!!!!」

とてつもない闘気がメイドファイブに襲い掛かり、ビリビリとした衝撃が伝わる。

「なにが始まるの…!?」

圧倒され、身構えることしかできないメイドファイブ。

やがて、5人とエスパーの間に、大きな音が響き、そこに巨大な塊が出現した。

「な、なんやあ!!?」



「みたか!!これこそメイドエスパーの最強必殺技!10トン鉄球アタック!!」

…確かにその塊にはおおきく「10t」と書かれている。

「この鉄球を念力で持ち上げて、お前たちに落とす!!どうだ、恐ろしいだろう!」



念力を込めて両手に力を入れるエスパー。

「まずいです!…あんなのが落ちてきたらひとたまりもないですわ!」

「あんなん、さすがにウチでも受けきれんで!!」



「むううううううう」

ひたすら念力のエスパー。

「…ひょっとして…」

ブルーが不思議そうな顔をする。

「あがらないんじゃないの?」

「ぎくっ!!そ、そんなことないわよ!!あと10分も念じれば、こうふわーっと…!!」





「見てられないアル」

「好きにさせるさ」

「…」





「と、とにかく!いま念じてるところなんだから、邪魔しないでよね!

これ、大変なんだから!他のことなんかかまってられないくらい集中がいるんだからね!」

そういうと、エスパーは再び念を込め始めた。

「むうううううううう」



「…」

ブルーは、エスパー目掛けてトレイを投げつけた。

そのトレイは、

くわーん!

と軽快な音を立ててエスパーの頭に命中し、彼女は「う」とだけうめいて、倒れた。

気絶しているようだ。





「やられたアルよ」

「撤収だ」

「…はずかしいでござるな」



メイドチャイナがメイドエスパーを抱え上げた。

「…今日は挨拶がわりだよ。メイドファイブ!必ずお前らを倒してやる!」

メイドシャドゥがそう言い放つと、次の瞬間、裏メイド戦隊は消えていた。





「…なんなんや」

イエローが困ったような顔でつぶやいた。



撤収中の裏メイド戦隊。

メイドエスパーが気付いたようだ。

「あれ?わたし?」

「あほか、お前は。重くて動かせんような物を切り札にするな」

シャドゥの冷静なツッコミ。

「あんな鉄球1個を投げつけるより、もっと小さい…ナイフとかフォークとかを

一度に何本も投げつけた方が効率いいんじゃないの?」

しばらく間があって…ぽんと手を打つエスパー。

「シャドゥ、かしこいねー!」

「あんたがアホなだけアル!」

「ようし、次はそれでいくわ!覚悟しなさい…とくにあの青いヤツ!!」





ブルーは、ひとりで裏メイド戦隊を追っていた。

あのトレイを投げつけたとき、エスパーに発信機をつけたのだ。

「これで…やつらの基地がわかったら…こっちから攻めていける!」

単騎先行するブルーのあせり。

「レッドとイエローは考え無しだし、ピンクとグリーンは戦えないし…わたしが、わたしがしっかりしないと!」





とんでもない実力の持ち主、裏メイド戦隊!

それを追って一人先走るブルーは大丈夫なのか!?

次回、「エスパー再び!さらば!?ブルー!」にメイド・チェーンジ!!