第7話 最強怪人ウツボカズラビザール

「あほかーっっ!!」

メイドレッド、千歳が吼えている。

「イエロー!!?あんた、わかってんの?なんで『カレー食べとってん』なんて素で言えるの?」

「ま、まあええやんか。実際、ビザールは倒せたんやし…」

「あのメイド・ホワイトってのが来てくんなかったら、あたしたち全員やられてたわよ!!」

「結果オーライ、ってヤツやんか」

「自覚が足らないって言ってんの!!」

メイドブルー、涼子が口を挟む。

「まあ、確かにあのホワイトがいなかったら、わたしたち、危なかったわね」

ピンクとグリーンの二人は、はらはらしながら状況を見守っている。

「やる気がないんなら、やめて。迷惑だわ。あなたの気まぐれで地球が征服されるかもしれないのよ。」

「う。」

さすがに能天気なイエローにも今の一言は効いたようだ。言葉につまる。

「悪かったがな…、堪忍な…ほんま。」

「言葉だけで納得しろっての?都合いいのね。」

「ブルー、もうそのへんにしとくにゅ…。」

たまらず、ピンクが助け舟を出す。



気まずい雰囲気の中、5人がいる部屋のドアがノックされた。

「私だ。取り込み中すまんが」

有栖川の声だ。

「ご主人様…あ、どうぞ」

グリーン、萌枝が返事し、ドアを開けた。



「今日はお前たちに紹介したい人がいる。」

有栖川はそういうと、後ろに従っている長身の女性を紹介した。

「いままでメイド長も兼ねていた執事の瀬場が、このごろのごたごたで体調を崩した。」

「え?瀬場さんが?」

レッドが思わず聞き返す。

「うん、そこで、新たにメイド長として彼女にきてもらった。白鳥くん、自己紹介を。」

促された女性は、一歩前に出る。

すらりとした長身に、ストレートの黒髪が似合う知的美人。

少々きつめの印象をうける。切れ長の目に、強い意志が見える深い黒の瞳。

「白鳥さやかです。よろしく、みなさん。」

全身白のメイド服に、また真っ白のエプロンをしている。目立つのが、ほかのメイド達より大き目のヘッドレスト。

「なんか、どっかで見たような…。」

「ということで、仲良くやるんだぞ」

「わたしも、部屋の片づけがあるので、これで…」

有栖川と、メイド長は部屋から出て行った。



「…あからさまにホワイトさんですわね…」

グリーンがボソッとつぶやく。

「イエロー、あなたの代わりがもう来たようよ。よかったわね」

ブルーがまだ皮肉っている。

「…まじかいな…もう、うち、いらんのか…?」

ショックだったのか、イエローは無言で出て行った。

レッドがあわてて跡を追う。





ビザール帝国。

ビザールクイーンが最後の切り札と自ら呼ぶウツボカズラビザールが出撃しようとしている。

「いいか、カズラ。まずピンクを倒せ。怖いのは奴の『奉仕力ヒーリング』だ。」

「ははっ」

「ピンクの戦闘力自体は知れている。奴さえ倒せば、一人欠けたやつらに「奉仕力ビーム」は打てない!」

「ふふふ、なかなかの作戦だが、うまくいくのかな」

突如、クイーンの背中から声がした。

「!?誰だ?」

現れたのは、男。全身からまがまがしいオーラと、妖しい色気を漂わせている。

「俺は、ビザールウルフ。お前にかわってビザール帝国の指揮をとる男さ。」

「な、なんだと?」

「ビザール帝王様は度重なる失態に大変お怒りだ。貴重な怪人たちを4人も犠牲にしておいて…。」

「くう…」

「だいたい、なんで怪人5人一辺に出撃させなかったんだ?」

「そ、それは…。」

「お前のコントロール術が未熟だから、だろ?1作戦に1人が限界だった。それでよく指揮官なんて名乗れるな。」

「今度こそ、カズラが奴らを倒す!作戦も完璧だ!」

「今度しくじったら次は無いぜ。覚えときな…。」

「くう…。いけ!カズラ!!必ずや!メイドファイブを仕留めるんだ!!」







ウツボカズラビザールは、全身をつたに覆われたような植物型の怪人だ。

背中から生えている茎の先には、大きな袋状のものがぶらさがっており、そこにいれられた人間は、消化吸収されてしまう。

突如として街中に出現したウツボカズラビザールは、次々と住民を襲い自らの養分としていた。

「メイドファイブはまだか!」

メイドファイブを誘い出すように大声で叫ぶ。

やがて、メイドファイブの5人が駆けつけた。

「ビザール!!そこまでよ!」

レッドが気勢を上げる。

「返り討ちにしてくれる!ビザールクイーン様のために!」

メイドファイブたちは、いつもの様に前衛にレッド、ブルー、イエローが立ち、後ろにグリーンとピンク。

「くくっ、いくぞ」

ウツボカズラビザールは低く笑うと、その右手から伸びている茎を地面に突きたてた。

そこに、もう1匹のウツボカズラビザールが生えてくる。

左手も同様に、ウツボカズラを生み出し、3人となって、前衛の3人にそれぞれ対峙した。

「ふ、増えたでこいつ!?」

鞭のようにしなるつたを振りかざし、襲いくるウツボカズラ。

鋭い攻撃が連続して繰り出される。

「こいつ…やる!」

ブルーがいち早く危険を察知する。

3人はそれぞれの相手を押さえ込むのに精一杯だ。

ときおり、つたが伸びてグリーンとピンクを襲うが、グリーンが冷静に払いのけている。

やがて、一瞬のスキをついて、特別に太い茎がピンクを捉えた。

「にゅう!!」

「ピンクさん!」

グリーンがはたきで茎を攻撃するが、はじかれてしまう。

そして、ピンクは空高く持ち上げられ…

ウツボカズラの消化袋に投げ入れられた。

「ピンクー!!」

4人が叫ぶ。

「この!えい!」

ピンクは必死に袋の周りを蹴りまわるが、びくともしない。

やがて、消化液が分泌されはじめ、ピンクの服を溶かしだした。

じゅうっ、と煙があがる。

「にゃあああああ!!!」



「くくく、わたしの袋は絶対に破れない。もらったよ、メイドファイブ!!」

あせる4人。早く目の前の敵を倒さないと、ピンクが…!!

いらだちのせいか、思うように攻撃が当たらず、押し込まれている。

「あ、あかん!こいつ強いわ!」

「早く!ピンクが溶かされちゃう!」

「そ、そんなこと言っても…!!」



後衛で冷静に状況を分析するグリーン。

ふと気付く。

後から現れた2体のおしりから、茎のような管が生えている…。

それは地面に突き刺さり、ドクドクと脈打っている。…そうか!!



「ブルーさん!イエローさん!あなたたちの相手にしているウツボカズラビザールは本体じゃないですわ!」

「え?」

「なんやて?」

「おしりから出てる茎を切って下さい!!奴らは本体からのただの枝分かれですわ!!」

「ふん、わかったところでわたしの攻撃をかいくぐれるものか!!」



「よっしゃ、わかった!!」

突然イエローが駆け出し、1人で3人を相手にする位置に立つ。

「玉砕覚悟で突っ込んできたか!ばかめ!」

ウツボカズラビザールの攻撃を一身に浴びるイエロー。

「な、なぜだ?なぜわたしの攻撃をこれだけ受けて立っていられるんだ!!」

「ブルーはん!!今のうちに『奉仕力カッター』や!!」

「わかったわ!!」

ブルーが投げつける円盤が、狙い通りに茎を切断した。

「ギャアアアア」

2体の怪人が絶叫して枯れていった。

「さすがや、ブルーはん!!」

「あなたもね、イエロー!」



「ふん、しかしピンクはまだわたしの手の内だ!」

「チャンスなのに奉仕力ビームが打てない!!」

レッドが悔しがる。



すると、突然上から声がした。

「いいえ!今こそ打つのよ奉仕力ビーム!!」

ビルの上に突如現れた影は、メイド・ホワイトだった。



ウツボカズラビザールは困惑する。

「な、なんだと?ピンクさえ押さえておけば奉仕力ビームは打てないはずじゃなかったのか!?」

「甘いね!!いくよ!みんな!」

レッドが叫んだ瞬間、5人はそれぞれの武器を天高く投げ上げた。

それは、空中で融合し、変形し・・・

やがて、巨大な砲身となって地上に降りてきた。

5人はそれぞれその砲身の配置につく。

グリーンとホワイトが発射口の横に、イエローとブルーが砲身の横に、レッドが引き金を引く位置に。

「奉仕力ビィィィィィィム!!」

五人の奉仕力がひとつにまとまり、砲身から5色のきらびやかな光線が発射された。



「そ、そんなばかなああああああぁぁぁぁぁ」

蒸発するウツボカズラビザール。

その跡に、全身をボロボロに溶かされ、満身創痍のピンクが倒れていた。



「ピンク!」

駆け寄るメイド戦士たち。

「だ、大丈夫にゅ…」

「ピンク!」

「よかった…」



「グリーンの的確な判断、ブルーとイエローのコンビネーション、見事だったわよ。また会いましょう、ご奉仕戦隊」

「あ、ホワイト、ちょっと待って…!」

しかし、ホワイトはもう消えていた。



「借りは返せたんやろか…?」

イエローのつぶやきにブルーが答える。

「これぐらいで借りを返したなんて思わないで。」

レッドが思わずブルーに叫ぶ。

「そりゃないよ、ブルー!!」

「これからも活躍してもらわないと、借りなんて返せるわけないじゃない。」

「あ。」

イエローが泣き出した。

「おおきに…ほんま、おおきに…。」



ビザール帝国。

「メイド・ホワイトだと…。」

ビザールクイーンの手がわなわなと振るえている。

「くく、残念だったな、クイーン。」

「ウ、ウルフ!こ、これは何かの間違いだ!私が敗れるはずがない!」

「何と言おうと、お前は負けたんだ。たったいまから、このウルフがビザール帝国の指揮官だ!!」

「うう…」

「衛兵!この生意気な女を地下牢に監禁しておけ!!」

「そ、そんな…」

衛兵に引きずられて連行されるクイーン。その間、ずっと何かをわめいていた。

「さて。このウルフが指揮官になったからには…」

ウルフはにやりと笑う。



最強怪人を退けたメイドファイブ!!チームワークは大事だぞ!!

それにしても気になるのはビザール帝国の新幹部だ!!

次回、「ビザール帝国逆襲!裏メイド戦隊!!」にメイド・チェーンジ!